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菓子の主客の心得

菓子に定まった食べ方はありません。ここには大略の心得を記したばかりで、茶道の作法の上の扱いですから、手際よく、無作法でない限り自由にいただけばよいのです。ここでは裏千家での作法を記述しましたが、流派によって少しは扱いが異なることがあります。

亭主の心得
菓子について
主菓子を鉢などに盛る時、柔らかいきんとんなどの菓子は、積み重ねると形が崩れるので、できるだけ重ねないようにします。
菓子の裏に竹の皮などをつけたものがありますが、客に出す時は、注意してこれを取っておきます。
笹の葉とか椿餅や柏餅の葉は、菓子につけたまま出します。
粽もいろいろありますが、菓子化された京都の粽は、鞍馬山の笹を使用しています。笹の軸を5cmほど残して切って、鉢または盆に盛りますが、太いほうを下にして鉢に盛り入れます。そして笹の葉が乾かないように湿しておくとよいです。粽によらず、葉をあしらった菓子は、乾かないように心入れをすること。粽は葉に包んだままの形で出す時と、中の笹一枚にして使用する時とがあります。
竹流しは竹のまま水に冷やしておいて、使用する時に水を拭い、下の節に小さい穴をあけて、籠や鉢などの器に斜めに入れて出します。
串団子は鉢よりも、平らな盆あるいは皿に盛り込むほうがよく、餡団子は銘々皿を使用します。粽・竹流し・串団子には楊枝を添えません。笹巻き・椿餅・桜餅・柏餅などには、楊枝を添えるのがよいです。
芯に餡を入れた押物は、半生菓子と称し、生菓子と干菓子の中間菓子です。盛り込みに使用する時は、箸を添えることもありますが、銘々の時には、楊枝は必要ありません。それは、外皮が楊枝で切れず、手で割るからです。
善哉、萩の餅など、柔らかいものを使う時は、適当な器に容れ、銘々に規定の箸を一膳あて添えます。
干菓子の盛り込みは二種類にしますが、一種類のこともあり、配色が肝心です。
落雁・片栗の類は「真」で、有平生砂糖の類は「草」です。「真」の品はできるだけ正しく盛り、「草」のものは無造作に盛り付けるのがよいです。白雪(はくせっ)こう・落雁・片栗の類は紅白を一組として使用することがあります。例としては「山川」のようなものがあります。
吹寄せなどは銘にちなみ、箕の中に「草」に盛るのがよいです。器も竹組の箕とか籠のものがふさわしく、味があってよいです。
有平は砂糖に戻ったものを使用すること。光沢のある、飴のままのものは、器に付着して仕損じることがあるから、注意が必要です。また溶解も悪く、茶との調和がとれないので、有平糖になってから使用すること。最近は時間と量の関係で出来上がってから間がなく、飴の状態のものが多いです。

菓子器について
食籠は温かい菓子の時、または腰掛などで出す際に使用するのがよいです。扱いは、蓋のみを先に拝見して順次詰客まで回しておき、それから菓子をいただきます。詰客が蓋をして返しますが、これは手数をはぶくためです。しかし温かい菓子の時は、さめてはせっかくの心入れも無駄になるので、こんな場合は、いちいち蓋をして、次へ回すのがよいです。
二重食籠の掛子には干菓子を容れ、主菓子と重ねて使いますが、これは薄茶ばかりの時がよいです。扱いは普通の食籠に準じますが、主菓子を先に回し、掛子の干菓子は後に回します。流儀により食籠類を普通の菓子器同様に使います。
食籠・鉢類の主菓子盛り込みは、席中人数だけを入れて出します。また器の内部へ露を打つのは季節により、器と菓子との感じを引立たせるための亭主の扱いです。
三重食籠の上部の掛子には口取を入れます。口取には青紫蘇の実の塩漬・椎茸・昆布の佃煮などを使用します。
菓子器は重くとも軽くとも、必ず両手扱いします。銘々盆や惣菓子器などを片手扱いするのは、破損のおそれもあり、危険です。
大広間の大寄せの茶会でも、大鉢にたくさん盛り込むのは、ひかえるべきです。

楊枝 ・箸について
黒もじと杉楊枝を一膳として使う場合、善哉などの杉楊枝は六寸五分(19.2cm)の紅殻染ですが、場合によっては黒もじと同寸にします。
席中以外で菓子を出す時、懐石膳に黒もじを打つことがあります。
鉢・食籠などにつける箸は、鉢の大きさに合わせてその長さを七・八寸と決めます。黒もじを正式としますが、赤杉・白竹・胡麻竹などもあり、堅い質の箸は器を損ずるから、趣向以外は使わないほうがよいです。象牙の箸などは扱いを心得るべきで、器に傷のつく場合があります。
青竹の箸は、一般に使用しませんが、流儀によっては使用します。趣向として使う時もあります。
箸および楊枝は、使用する前にあらかじめ水に漬けておき、菓子器に添える直前に軽く拭き清めて出します。これは清浄さを示すためです。乾いたまま使用しないこと。

客の心得
菓子の食べ方
主菓子は懐紙に取り、紙のまま手に受けてもち、楊枝で適当に切っていただきます。顔をおおうようにして食べるのは、かえって無作法です。
粽は、葉に包んだままの形で出る時と、中の笹一枚にして使う時とがあります。
 笹一枚の時は、懐紙に取って、葉の先を広げて折り曲げ、楊枝で切って食べます。
 包んだままの場合は、太いほうから藺(い)を解いて、軸のほうに巻き寄せ、笹の葉先を広げて、中身を包んだ一枚の笹葉とともに紙の上へ抜き取ります。残りの葉はたたんで藺で結び、笹一枚の時のようにしていただきます。 一枚の葉は三角に折って軸を通しておき、紙に包んでしまいます。無作法に散らかさないのも心得です。最近は籠を一緒にすることもありますが、やはり小さくたたんで捨てるべきです。笹巻・その他変わった粽もこれに準じます。この粽の例は京菓子の粽の場合で、吟味されて、茶菓子に用いられるように作られています。
椿餅・桜餅・柏餅などは、葉を折り曲げるかまたは葉を下に折り重ねて、切っていただきます。
串団子などは、懐紙か皿に楊枝で一つ抜き取っていただきます。横食いはしないように心得るべきです。田楽菓子も同じです。
竹流しは、そのまま懐紙の上で竹口を下に向けると中身が出るので、食べる量だけ出して自分の楊枝で切って、いただきます。節を口にして吹いたり、竹を口にして吸うほうが味がよいと、無作法しないように心得なければなりません。
善哉の餅などは、格好に切って食べます。歯で引くような図は控えましょう。
干菓子の中には、小型で、割って食べようとすると四方に粉が散って粗相をすることがあります。また、振り出しの菓子や形の丸いものの場合、懐紙の外に出ることがあったりするから、注意して取り扱わないといけません。
干菓子は二種あれば二種、三種あれば三種を一つ一つ取ってよいです。

菓子器の扱い方
主菓子でも干菓子でも、亭主から「どうぞお菓子を」と挨拶があると、すぐに懐紙を出して前に置く人を見かけますが、まず隣の客に「お先に」と一礼し、菓子器をおしいただいてから、懐紙を出してください。早すぎるのは無作法です。
銘々菓子器などを返す時、客は心得て皿の時はその間に紙を挟むべきです。懐石などの器には紙を挟みますが、菓子皿の時はあまり守られていないようです。
主菓子を取った後で、柔らかい菓子などの盛り直しは控えるべきです。これはかえって形を損ずるからです。
縁高および銘々盆から菓子を取った後、漆器類あるいは金属器類を、法式にとらわれ、紙質を考えずむやみに拭うことは、かえって器を損じるから注意が必要です。


楊枝・箸の扱い方
善哉の場合など、黒もじと杉楊枝が出た時は、添えれば箸になるからです。黒もじは、持ち帰るのが正式で、杉楊枝は二つに折って返しておきます。
懐石膳の時、黒もじがあれば、これは菓子用の箸ですから扱いを忘れず、取り持ってください。
客は、菓子を取り、箸先が汚れた時は懐紙で拭って次に回します。



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